2007年04月18日
いびきと歯ぎしり
急に会話がとぎれた、と思ったら、平松のいびきが聞こえた。
追いかけるように麻井のいびきも響いた。
彼らは眠気をこらえて、私と話をしていたのだ。
部屋には時計がないので腕時計で確認してみると、
まだ9時を少しまわったばかりだ。
いびきに続いて、平松のすさまじい歯ぎしりがはじまった。
ガリガリ、ガリガリ、ギーコギーコ、ギーコギーコ……
噛み締める強さで歯が砕けてしまうのではないかと思うほどだ。
この暑苦しさと騒音で今夜は眠れないのではないか。
いや、これからもだいじょうぶだろうか。
起き上がってのぞきこんでみると、2人とも
朝まで起きないだろうと確信できるほど、疲労は深そうだ。
平松は両手を上にあげた状態で苦しそうに半身をよじっている。
麻井は口を開いたまま顔をしかめて、ミイラのように硬直している。
私も明日からこんな姿で寝るのだろうか。
隣りの部屋では蚋(ぶよ)をたたく音がまだつづく。
目かくしの高い壁でおおわれた飯場のむこうには、
背丈以上もある夏草の茂みがこんもりとして、
奥から刃物を研ぎつづけるような虫の声が聞こえる。
その巨大な暗闇は私を飲み込みそうだ。
生まれて初めて感じる、強い孤独だった。
いっそのこと、これからわけのわからない出来事が
起きる前に闇に飲み込まれてしまってもいい、と思う。
室内に充満した男の体臭や汗の匂いを嗅ぎつけた蚋(ぶよ)が、
暗闇から飛び立ち、網戸に突進してくる。
平松が買ってきたという蚊とり線香が炊かれていたが、
無力だった。彼らは網戸に勢いあまってはねかえされると、
ほつれた糸のように転落した。
が、すぐに体勢を立てなおし、執拗に侵入をこころみる。
彼らの獰猛な食欲にうんざりしながら、私は部屋を出てトイレに向かった。
飯場生活1日目 21:00-22:00 ~ To be continued
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人気blogランキングへ
↑ ↑ ブログランキングに参加しています。クリックで応援いただけるとありがたいです。
あらかじめ、おことわりしておきます。明日はトイレの描写があります。
正直なところ、不潔で不愉快な描写もあると思います。
リアリティ重視でいきたいのでそのまま書きますが、
いやだなと感じる方はサラッと読み飛ばしてください。
投稿者 Napori Takao : 10:28