2007年04月17日
同部屋の3人
8月上旬の扇風機ひとつないプレハブの部屋。
出入口のドアには網戸がないので、
蚋(ぶよ)が入ってこないように、夕方から閉めきられた。
飯場一面に敷かれたアスファルトの放熱もあるのだろう、
夜が更けるにつれて蒸し暑さが増した。
50センチしか開かない窓の網戸では、
室内の湿った空気はなかなか循環しない。
おたがいの体温がここにあると感じることさえ、うっとうしい。
ベニヤ板1枚で隔てたとなりの部屋から、ひっきりなしに
腕や足にたかる蚋をたたく音が聞こえる。
平松がちょっと苛立って言った。
「まったく電気つけるのも暑苦しいなあ。消すよ」
「はい」
麻井がこたえると、電気を切ってしまった。
私達は暗い室内でテレビを観た。
彼らが布団に寝転ぶので、私も自分に支給された布団を敷き、
横になった。厚手の敷布団の肩口は黒く、べとべとしていて、
男の濃密な体臭やタバコ臭がしみついていた。
とくに枕は吐き気を感じるほど臭うので、持ってきたタオルを被せた。
数百円しか入っていない財布を枕の下にかくす。
2人とも自然を装っているが、新入りの私がこの部屋に入ったことで
ぎこちなさを感じているのがわかる。今夜は2階の男は来ないようだ。
そのうち平松が、「運転手だって?」「どこからきたの?」
「出身はどこ?」などと聞いてきたが、
私は聞かれたことにぽつぽつとこたえた。
若いくせにどうしてこんなところに来たのか、それともよほどの
事情があったのか、興味があるようだったが、
初対面で深い話まで聞くことは遠慮しているようだ。
ここでは他人の人生を詮索するのは好まれないのだろう。
私もそれを感じたので、聞けなかった。
私は変わった若者だと思われたようだった。
そのうち、会話は自然とプライバシーに無関係な飯場の話になった。
この飯場は自前で土木機械を持っておらず、
人夫の貸し出しだけを専門にやっているという。下請けや孫請けが多く、
土工はさまざまな現場にかりだされるらしい。常時、4、50人がいるようだ。
年齢層は見た目で6、70代が1割、50代が6割、40代が2割、30代が1割。
つまり40代以上が9割で、20代はいない。10代は私ひとりだ。
老けて見える者や若く見える者がいるので、実際はだれにもわからないが。
飯場生活1日目 20:00-21:00 ~ To be continued
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コメント
毎日ドキドキしながら読んでます。
ところでナポリさんは
ちばてつやの「男たち」ってマンガを知ってますか?
視点は違いますが、タコ部屋の話もあって面白いですよ。
でも、後になって思い出すと
リアルな世界の方がもっと面白いかもしれませんね。
次回も楽しみです。
それではまた。
投稿者 新米パパ : 2007年04月17日 21:01
新米パパさんへ
コメントありがとうございます。
ちばてつやの「男たち」ですか。
連載中だと影響されちゃうとまずいので、
この話が終わったら、読んでみますね。
そうですか、ドキドキ感ですか~
ありがとうございます。
投稿者 ナポリタカオ : 2007年04月18日 10:40