2007年03月20日
別れの予感(1)
ある土曜日。深夜12時前後の田園都市線。
渋谷から長津田へ向かう下り電車。
大人の男女が扉のそばに佇んでいる。
男性はグレーがかった長髪で、身なりもこざっぱりしている。
生活にも余裕がありそうだ。
だが、彼は肩を落とし、扉脇の手すりにもたれかかっている。
女性はうしろ姿しか見えないが、40歳前後だろうか。
黒々としたソバージュヘアーの裏にある瞳は、
じっと彼を見たまま、動かないようだ。
「年の差夫婦」に見える。
ふたりは押し黙ったまま、重い車両の音を聴いている。
夫は妻を見ようとしない。
妻の顔はそれでも夫にずっと向けられている。
夫は自分の靴のあたりに視線を落としたまま、深く息をはいた。
アルコールの混じった生臭さが漂う。
その姿勢のまま、ポツリと言った。
「今日は楽しくなかったの?」
「えっ……うん、まあ」
妻は彼の目を見て答えた。
「もうちょっと楽しんでほしかったな。というか……」
「楽しいと思えなかったから、しかたないじゃない」
「でもさ」
「私、わからないもの、あなたの知り合いの人のこと……」
この話題を何度もしてきたようなニュアンスだ。
夫は苦い顔で唇を噛んだ。
To be continued
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。クリックで応援いただけるとありがたいです。
投稿者 Napori Takao : 10:10