2007年01月19日

寝かせてもらえない床屋(1)

N氏は十数年来、通っていた床屋を変えることにした。
なんの説明もなく、ある日急に整髪料の値段をあげられたり、
髭剃りのときに従業員が誤ってN氏の唇を切ってしまったのに、
なんの謝罪もなく、笑顔で「ありがとうございます」と言われたり……
長いつきあいなのに、どうして大切なことをちゃんと伝えてくれないのかと思い、
腹が立つより、なんだか切なくなってしまったのだ。
わざわざ電車賃を往復で700円ほど使って出かけていたのに。

そこで前から気になっていた、地元の床屋をネットで調べてみた。
店主の腕が確かだ、という印象のHPを見つけたので、
どんなものか確かめてみたくなった。
HPにもあったのように、そこはご主人がひとりでやっていた。

「いらっしゃいませ」
 入っていくと、彼はN氏の顔より髪を一瞥した。
 そして、本能的にやや眉をひそめた。
 なかなか鋭いプロの眼光だ。

 前の客が終わり、N氏を席に案内しながらの第一声。
「いやあ、お客さんみたいなカットのしかたは、
 私から見ると、重たくてしょうがないですね。
 いくら髪が伸びてるからって、これはねえ~」
「そうですか?」
「ためしに私のおすすめするようにカットさせてもらえませんか?」
「はい」

ご主人は犬の毛並みをながめるように、N氏の髪をかきわける。
「うわあ、これはどうしようもない」

「……えっ?」
「私ははっきりモノを言う性質でして、まあ怒らないで聞いてくださいね。
 お客さんのアタマは私と同じで、ひどいくせっ毛ですね」
「あ、そういことですか。よく言われます」
「しかし、どうしようもない頭だなあ、ツムジが4つあるもの」
「(ムッとしながら)ほかの店で10個あるって言われたこともあります」
「そんなにはないけどね。でも、ここと、ここと、ここと、ここ!
 ひどい! どうしようもない! アタマのできが悪い!
 あ、バカだって意味じゃないですよ」

「(ムッ)わかってますよ」
 以後、N氏のアタマへのダメだしは続くのである。

                           To be continued
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人気blogランキングへ
↑ブログランキングに参加しています。クリックで応援いただけるとありがたいです。


投稿者 Napori Takao : 11:22 | コメント (0)

コメント

コメントを送ってください




ログイン情報を記憶しますか?

(スタイル用のHTMLタグが使えます)