2007年01月16日

お疲れさまです

どこか、どんよりとした空気が漂う、20:00のドトール。
50歳前後だろうか、頭のてっぺんが薄くなった男が、
疲れ切った表情でコーヒーを飲んでいる。

ジャケットにスラックスという格好だが、
ジャケットもシャツもちょっとくたびれて皺がよっている。
携帯電話が鳴った。
「あ、はい。あ、どうも、お疲れさまです。えーっと……
 あ、それは……確かにそうです、すみません。
 いや、生徒に最後にかけた言葉がちょっと乱暴だったのかも……
 いえ、そんなニュアンスで言ったんじゃないんですけど、
 言葉がちょっと足りなかったから、誤解を受けたのかも知れません……

 ハイ、それは本人にもあとから説明しまして、謝りました……
 えっ、あ、授業ですか。 それは大丈夫です。
 でも、私、国語教えるの初めてだったものですから、
 ちょっと最初だけ、心もとないかなぁと思ったりしたんですが……
 え? いいえ、いいえ! 心もとないとか、そういうことは、
 生徒の前では口に出していません、はい!

 だいじょうぶです、だいじょうぶです! 
 
 ……それとあの、
 Aの、あ、A君の容態はどうですか?

 ……そうですか。わかりました。はい、すみません」
 男は苦い顔で額に手をやり、
 高い天井の虚空をいつまでも見つめた……

 N氏は故郷の友人からもらった年賀状の
 文面の端に書かれた言葉を思い出していた。
 「なんだか、もう先生やんなゃっちゃったよ」

                              The End
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投稿者 Napori Takao : 11:48