2006年10月24日

静寂のなかで

 それから何度もその標識を見た。ガソリンもなくなってきた。
「どうするのよ……」
「このまま走ったらあぶないよ!」
「95号線(ハイウェイ)を出てみるわ。1号線(ローカル)を北へ向かえば、
 海岸線と逆に出られるから、少しは霧が避けられるかもしれない」

ガス欠よりも、視界がきかない状態では対向車に追突したり、されたりする
危険が大きい。うっすら見える黄色い照明を頼りに、高速道路の出口を探す。
半分は勘で行くしかなかった。側面のガードレールに沿って、恐る恐る進む。
かなり走ったところでガードレールが途切れた。
なにかが前にぼんやり見えた気がして、車を停止させる。

「ハイウェイからはずれたから、とりあえず、危なくなさそうよ」
 あたりはひっそりと静まり返っていた。
「ここだったら安全かもしれない。しばらく待ってみよう」
 友人夫婦は猛反対した。
「こんなところに停めたってあぶないじゃない」
「事故にあうかもしれないだろ!」
「ガタガタ言ってもしょうがないでしょ! 絶対大丈夫、私にはわかるの!」
 そんな気がしたのだ。

 朝の5時くらいになった。
「あ、ようやく霧が晴れてきた!」
 やがて、あたりの景色がはっきりと見えはじめた。
 車は大きく、古めかしいゲートの前でピタリと止まっていた。
「ここは、どこだろう?」
 私たちは降りて、門を見に行った。
 石垣に埋め込んである表札には、Guild Cemetery(ギルド霊園)。
 ユダヤ商工会や石工ギルドの共同墓地のようだった。

「なんでこんなところに停めなきゃならないのよ!」
 口をとがらせて怒る友人たちに、私は言った。
「しょうがないじゃないの。連れてこられちゃったんだから。
 もしかしたら、なにかの被害から助かったのかもしれないよ」

「そんなことあるわけないじゃない!」
 でも、墓地に着いたとき、たしかに、これで大丈夫だという感覚があった。
 導かれた気がしたのだ。ふと、最初に住んだアパートに出てきた
 あの老夫婦が、ユダヤ系だったのを思い出した。
 彼らが案内してくれたのか……

ガソリンメータの残量(針)を見ると、とっくに0を超えていた。
私たちはそれから数キロ先のスタンドでガソリンを買い、帰途についた。
あとでわかったのだが、95号線から1号線に続く道にはT字路があり、
左折しなければ墓地にたどり着けないのだが、私には左折した覚えがない。
それにしても、ガソリンが減るあいだ、私たちはどこを走っていたのだろう。
深い霧の中で、いったいなにが起きたのだろうか……

                        To be continued
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投稿者 Napori Takao : 11:54 | コメント (2)

コメント

今日は落ち着いて読めましたよ。

でもこの話相当長く続きそうですね。

投稿者 団塊世代が心と身体とお金の健康を考える!byヤスオ : 2006年10月24日 19:15

ヤスオさんへ

コメントありがとうございます。
この話を書いているおかげで、
トワイライトニュースネタも少しずつたまりつつあります。
ときどきやろうかと思いましたが、
まあノリというのもあるので、しばらくはこのままいきます。

投稿者 ナポリタカオ : 2006年10月25日 12:28