2006年07月29日

鉄の掟(1)

1985年あたりの出来事である。
N氏は22歳で放送作家に弟子入りしたのだが、
入ってまもなく、ある先輩に食事に誘われた。
出かけていくと、そこはフグ料理屋であった。
食事の席についているのは、先輩2人と取引先のプロデューサー。
どうやら、その人のおごりのようであった。

N氏以外の先輩達は、酒を飲みながらプロデューサーと打ち合わせだった。
しかし、N氏にとっては、なんのことやらわからないので、
生まれて初めて食べるフグ料理のフルコースに、むさぼりついた。
食事が終わり、プロデューサーが帰った途端、N氏は先輩にどやされた。

「馬鹿野郎、ガツガツ食いやがって!
 お前がひとりで半分くらい食っちゃったから、俺の雑炊ねえじゃねか。
 それに失礼だろ、相手に! まわり見て食え!」
そのあげく、作法をわきまえないN氏に、きびしい鉄の掟が課せられた。

『先輩が箸をつけたあとでなければ、絶対に食うな。
 仲間以外の第三者が同席した場合、
 先輩が箸をつけたものより、ランクの低いものを食べろ』

おごられるのがわかっている場合、
先輩は遠慮して、相手よりランクの低い料理を注文する。
その先輩より社会的にもランクの低いN氏は、
もっとランクの低い料理を注文するのが当然だろう、という理屈なのである。
そんな鉄の掟は、のちにN氏を悲劇にいざなうのであった。

ある日、ラジオドラマの収録が行われた。
タレントグループのO、俳優D、さらに声優のA子、B子が参加、
先輩、N氏も収録を見守った。

ミニ情報だが、ここでN氏は声優を体験している。
ストーリーにどうしても、喫茶店のマスター役が必要になったからだ。
「彼? 彼なら今日は来てないよ」
というセリフを一発OKでやりとげた彼は、
大物声優の原石の可能性を周囲に示唆したのだが、
だれも彼の才能に気づく者はいなかった。

そんなこともありながら無事に収録は終わった。
そして、お疲れ様でしたということで、一同に出前がふるまわれた。
直径45センチほどのプラスチックの大皿二つ。
小僧寿司の登場であった。

                 To be continued
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投稿者 Napori Takao : 10:45 | コメント (2)

コメント

こんばんは。
先輩も意地悪ですね!
食事に行く前にちょっとエチケットなるものを教えておいてくれるといいのにね。
食べてからどやされたんじゃ、消化不良おこしちゃう。

小僧寿し、ひとつもあたらなかったとか^^

投稿者 ひまわり : 2006年07月29日 21:25

ひまわりさん

コメントありがとうございます。
さすが鋭い。
やばい、展開が読まれてる……

投稿者 ナポリタカオ : 2006年07月31日 07:27